インドネシアにはルコ(Ruko)と呼ばれる形態の商業用物件があります。ルコはオフィスだけでなく、店舗や倉庫としても利用でき、特に店舗ビジネスを考えている企業にとってはモールテナント物件と並ぶ候補物件となります。
ただ、日系企業には馴染みの少ないルコはその料金体系や契約の流れが複雑に感じられることも少なくありません。
この記事では、ジャカルタのルコの料金体系、契約の流れ、物件探しの注意点まで徹底解説します。ジャカルタで店舗ビジネスをお考えの方やルコをお探しの方はぜひ参考にしてください。

ジャカルタのルコ(Ruko)とは?
ルコ(Ruko)は「Rumah(=家)」「Toko(=店)」の略で、インドネシア語で「店舗付き住宅」を意味します。
ルコは2〜4階建ての物件で、もともとは1階が店舗スペース、上階が住居スペースとして利用されることが一般的でした。ただ、最近は1階を店舗、2階を倉庫、3階をオフィスといった形で、全フロアを商用利用するケースが増えてきています。もちろん、全ての階を店舗として利用することも可能です。
ルコは小売店や飲食店、フィットネスジムなどの店舗はもちろん、学習塾や法律事務所などのサービス業でも広く利用されています。また、ルコ物件は複数棟並んでいることが多く、複数棟のルコを利用してホテルやサービスオフィスとして運営している企業もあります。
ルコのメリット
- 豊富な物件数と選択肢:モールテナント物件は供給が限られており、人気のモールだと空きが出ても一瞬で埋まってしまいます。それに対して、ルコはジャカルタ全域に物件数が豊富で、エリアごとの選択肢が多くあります。
- 比較的緩やかな入居審査:モールテナント物件に比べると入居審査が緩く、物件さえ空いていれば賃貸できることがほとんどです。モール物件は業態や価格帯、ブランド力なども審査の対象となり、お金だけではどうにもならないこともありますが、ルコではそういったことがありません。
- コストパフォーマンスが高い:モールテナント物件やオフィスビルと比べると平米あたりの料金は割安となることが多いです。また、物件によっては専用の駐車場スペースが確保されており、追加の駐車場料金がかからないことがあります。
- 自由度が高い:1階を店舗、上階をオフィスや倉庫、あるいは社員寮として利用するなど、自社のニーズに合わせて自由にレイアウトや用途を決められます。また、営業時間や内装、サービス内容なども他のテナントとの兼ね合いを気にする必要がありません。
ルコのデメリット
- 高額な初期費用:賃貸オフィスと同様、内装工事が必要なためそのための費用や手間が必要となります。また物件によっては2年分の家賃の一括払いが必要となり、初期費用が高額となることがあります。
- 維持管理の手間と費用:電気水道などの契約やネット回線の整備、予備電源、日々の清掃など、物件の維持管理は基本的にテナント企業の責任となります。また、ルコ物件は個人オーナーが多く、建物のメンテナンスに無頓着なことが少なくありません。場合によっては雨漏りなど建物の修繕も自社で行う必要があり、予期せぬ修繕費用が発生するリスクもあります。
- セキュリティと安全性の問題:セキュリティ対策は自己責任となり、警備員やCCDカメラなどを自社で用意する必要があります。特に治安の懸念がある地域では、防犯対策に追加投資が必要になる場合があります。

ジャカルタのルコの契約形態について
料金体系を説明する前に、契約形態について簡単に説明しておきます。
ルコ物件のオーナーについて
ルコは各棟ごとに個人オーナーが所有していることが多いです。日本でいう建売住宅のようなイメージです。当然、契約内容や料金、入居審査の有無はオーナーの意向によっても異なります。
1棟貸しルコ
ルコ物件の全てのフロアを賃貸します。契約にもよりますが「3階だけ他の企業サブリースする」といったことも可能です。
ルコは1フロアあたり100m2 ほどの広さがありますので、4階建て物件なら400m2 ほどとなります。それなりに広い面積となりますので、従業員が多い企業や、店舗、オフィス、倉庫、など利用用途をはっきり分けたい企業に向いています。
フロア貸しルコ
ルコ物件の特定のフロアのみを賃貸します。このケースでは、貸主は物件オーナーの場合もありますし、サブリース会社の場合もあります。
1階の店舗スペースのみ必要で事務スペースは少なくていい、といった企業に向いています。

ジャカルタのルコの料金体系
基本賃料 (Rental Fee)
ルコの利用料です。1棟貸しの場合は1棟あたりの年間料金、フロア貸しの場合は平米あたりの月間料金で提示されることが多いです。ルコの立地や面積、築年数、周辺環境によって大きく変動します。
2025年現在の相場感は、南ジャカルタのルコで1棟あたりの場合、年間 Rp300,000,000 〜 Rp600,000,000 程度、平米あたりの場合、月間 Rp150,000 〜 Rp300,000 程度となります。
サービスチャージ (Service Charge)
日本でいう共益費、管理費に相当する費用です。
1棟貸しの場合は不要なことが多いです。
フロア貸しの場合は、貸主がルコ全体のメンテナンスをおこなってくれるため必要になります。2025年現在の相場感は平米あたり Rp50,000 〜 Rp150,000 程度です。
付加価値税 (VAT / PPN)
日本でいう消費税に相当します。インドネシアではVAT (Value Added Tax) または PPN (Pajak Pertambahan Nilai) と呼ばれ、基本賃料とサービスチャージに付加価値税をかけた額が実際の支払額となります。
2025年7月現在の付加価値税は11%となっています。
デポジット (Security Deposit)
日本の敷金や保証金に相当します。物件の破損や契約不履行などに備えるためのお金で、1棟貸しでもフロア貸しでも必要になります。通常、月額賃料の2ヶ月分から3ヶ月分を入居時に支払います。
契約終了時に、未払い賃料や原状回復費用がなければ返還されます。返還までの期間や条件も契約書で確認しておきましょう。なお、デポジットには前述の付加価値税はかかりません。
内装工事費用 (Fit-out Cost)
通常、ルコは内装が施されていない「スケルトン」の状態で引き渡されます。そのため、テナント企業は自社のビジネスニーズに合わせて、壁の設置、床材、照明、配線、什器の設置など、すべての内装工事を自己負担で行う必要があります。
内装工事の費用は、その内容やクオリティによって大きく変動するため一概には言えませんが、目安として1平米あたりR2,000,000からRp8,000,000程度とされています。オーナーが提携の内装業者を紹介してくれる場合もありますが、ご自身で業者を探して依頼することも可能です。
退去時には「原状回復義務」が発生し、入居時の状態に戻すための費用もテナント負担となるため、初期費用だけでなく、退去時の費用もあらかじめ見積もっておくことが重要です。
印紙税 (Duty Stamp / Materai)
インドネシアでは、一部の契約書に所定の印紙税(Materai)を貼付する必要があります。印紙税の金額は契約の種類や金額によって定められていますが、日本円に換算して数百円程度と、それほど大きな負担にはなりません。
仲介手数料
不動産仲介業者を利用する場合、仲介手数料がかかります。
日系不動産会社の場合、日本の習慣にならって家賃の1ヶ月分かかることが多いようです。弊社でも成約時に1ヶ月分の家賃を手数料として頂戴しております。
礼金・更新料について
インドネシアの賃貸オフィス契約では、日本でいう礼金や更新料に相当する費用はありません。
初期費用シミュレーション
実際に弊社で提案したことのあるオフィスを参考にして、初期費用のシミュレーションをしてみます。なお、数字はあくまで仮のものとなりますのでご了承ください。
前提条件
- ブロックM近くのルコ
- 3階建て、1棟貸し
- 延べ床面積:330m2
- 年間賃料:Rp450,000,000
- サービスチャージ:なし
- 付加価値税:11%
- デポジット:2ヶ月分
- 支払サイクル:1年払い
- 内装工事単価:平米あたりRp4,000,000
- 仲介手数料:家賃の1ヶ月分
家賃計算
- 付加価値税:Rp450,000,000 x 11% = Rp49,500,000
- 税込年間家賃:Rp450,000,000 + Rp49,500,000 = Rp499,500,000
その他費用
- デポジット:Rp450,000,000 ÷ 12ヶ月 x 2ヶ月 = Rp75,000,000
- 内装工事費:Rp4,000,000 x 330m2 = Rp1,320,000,000
- 仲介手数料:Rp450,000,000 ÷ 12ヶ月 = Rp37,500,000
初期費用合計
- 家賃:Rp499,500,000
- デポジット:Rp75,000,000
- 内装工事費:Rp1,320,000,000
- 仲介手数料:Rp37,500,000
- 合計:Rp1,932,000,000
ということで、3階建てのルコで日本円にしておよそ1900万円ほどの初期費用がかかる計算となります。なお、繰り返しとなりますが数字はあくまで仮のものとなりますので参考程度にお考えください。

ジャカルタでルコを探す際の注意点
- 周辺環境をしっかり調査する:ルコは物件自体の選択肢は多くあるものの、閑散としたエリアで何年も借り手がいないような物件もあります。特に店舗ビジネスの場合は、物件の条件だけでなく、人通りや他テナントなどの周辺環境をしっかりと確認しましょう。逆に店舗ビジネスはせず、事務所や倉庫として利用する場合はそのような物件の方が良い条件で交渉しやすくなります。
- インフラ状況を確認する:ルコではオフィスビルのような充実したインフラやセキュリティシステムを期待できません。電気・水道などのインフラが整っているか、必要な速度のインターネット回線が引けるか、などの状況を確認しておきましょう。
まとめ
以上、ジャカルタのルコについて解説してきました。ルコの概要からメリット・デメリット、料金体系、物件探しにおける注意点など、ルコに関する情報を網羅的にご理解いただけたかと思います。
ルコは店舗ビジネスを考えている企業はもちろん、ショールームや倉庫が必要な企業にもおすすめの物件です。ジャカルタでルコをお探しの際はぜひこの記事を参考にしてください。また、弊社でもルコ物件を多く取り扱っておりますので、ぜひお気軽にご連絡ください。