ジャカルタの賃貸オフィスの料金体系や物件選びの注意点を徹底解説!

ジャカルタで長期的な事業展開を見据える場合や、駐在員事務所から株式会社(PT)に切り替える場合はオフィスビル内の賃貸オフィスが主要な選択肢となります。しかし、インドネシアにおける賃貸オフィスの契約手続きや料金体系は、日本と異なる点も多く事前にしっかりと理解しておくことが重要です。

この記事では、ジャカルタの一般的なオフィスビル内の賃貸オフィスに焦点を当て、そのメリット・デメリットから、料金体系、オフィス選びのポイントまで徹底的に解説します。ジャカルタでオフィスをお探しの方は、ぜひ参考にしてください。

なお、サービスオフィスについてはこちらの記事で詳しく説明しています。サービスオフィスをお探しの方や一般的な賃貸オフィスとの違いを知りたい方はそちらの記事もぜひお読みください。

ジャカルタの賃貸オフィス

ジャカルタのオフィス市場の現状

まず、ジャカルタのオフィス市場について簡単に説明しておきます。スディルマン通りを中心としたジャカルタのビジネス街には高層オフィスビルが立ち並び、まさに近代都市といった様相です。

インドネシアのオフィスビルには「グレード」という分類があります。これは明確な法的基準があるわけではありませんが、立地や設備、築年数、ビルの規模などによってPremium、グレードA、グレードB、グレードCという形で分けられています。当然、このグレードは賃料相場に大きく影響するため、予算とニーズに合ったグレードのビルから探すのが効率的なオフィス探しのポイントです。

相場観については、コロナ禍以降ジャカルタのオフィス賃料は落ち着きを見せています。かつては平米あたりRp400,000以上で賃貸されていたオフィスビルも、現在ではRp200,000〜300,000程度で賃貸に出されている物件が見られるなど、借り手市場とも言える状況です。これは、新しいオフィスビルの供給増加と、リモートワークの普及が要因として挙げられます。

この傾向は、特に長期的な事業展開を考えている企業にとって、初期投資とランニングコストを抑える絶好の機会となります。賃料が比較的低くなっている今のうちに長期契約を結ぶことは有効な事業戦略と言えるでしょう。

ジャカルタ、SCBDのオフィスビル

ジャカルタの賃貸オフィスのメリット

  • 企業のブランディングと信頼性の向上:自社の専用オフィスを持つことは、顧客や取引先に対して大きな信頼感を与えます。特に、スディルマンやSCBDなどの主要ビジネスエリアのグレードの高いビルに入居することは、企業ブランドの大きなアピールになるでしょう。
  • 長期的なコストメリット:サービスオフィスに比べると、長期的な従業員一人当たりのオフィス費用は安くなることが多いです。特に、賃料が落ち着いている現在の状況では、長期契約を結ぶことで将来的な賃料高騰のリスクを抑えて事業運営を行うことが可能です。
  • セキュリティや充実したビル設備:オフィスビルでは警備員や入館ゲート、監視カメラなどのセキュリティシステムを完備しています。また、安定した電力供給や自動空調、エレベーター、コンビニ、銀行ATM、食堂、礼拝室、駐車場などの設備が整備されています。これにより、オフィスの安全と従業員の快適な就業環境を確保できます。
  • カスタマイズ性の高さと効率的なレイアウト 内装を自社の企業文化や業務フローに合わせて自由にデザインできる点が大きな魅力です。従業員の生産性を最大化するための最適なレイアウトを実現したり、ブランドイメージを反映した空間を創り出すことが可能です。
  • 自由なレイアウトと内装:オフィスのレイアウトや内装を自社の企業文化や業務フローに合わせて自由にデザインできます。これにより、従業員の生産性を最大化する最適なレイアウトを実現したり、企業のブランドイメージを明確にオフィスに反映させることが可能です。

ジャカルタの賃貸オフィスのデメリット

賃貸オフィスにはメリットだけでなくデメリットや注意点も存在します。ジャカルタでオフィスを借りる際は、以下のような点に留意することが重要です。

  • 初期費用の高さ: 一般的なオフィスビルを賃貸する場合、高額な初期費用がかかります。家賃は1年一括払いが多い上に、デポジット(敷金)として賃料の数ヶ月分が必要になります。また、家具や機材の購入費のほか、スケルトン(内装なし)の場合は内装工事費も必要となります。
  • 内装工事と原状回復の負担:賃貸オフィスの内装工事は、原則としてテナント企業側で行う必要があります。工事費用もかかる上に、1〜3ヶ月ほどの工事期間は家賃が発生しているのにオフィスが使えない状況となります。また、退去時には原状回復義務が伴い、その費用もテナント負担となるため、初期だけでなく退去時にもまとまった費用が発生します。
  • 契約期間が長期になりやすい:オフィスの賃貸契約は通常2年から5年といった長期契約が基本となり、契約期間中の解約には高額な違約金が発生します。急な事業計画の変更や人員の増減があっても、すぐに移転したり、オフィスを縮小・拡大することはできません。
ジャカルタのオフィススペース

ジャカルタの賃貸オフィスの料金体系

次にジャカルタの賃貸オフィス料金体系や相場感について解説します。なお、以前はドル建てで提示されることもありましたが、今はインドネシアルピア表記に統一されています。

基本賃料 (Rental Fee)

オフィスの利用料です。通常1平方メートルあたりの月額料金で表示され、賃料に占有面積をかけたものが月額家賃となります。ビルの立地やグレード、築年数、設備の充実度によって大きく変動します。

2025年現在の相場感は、ジャカルタのビジネス街の中心地で平米あたり Rp150,000 〜 Rp450,000 程度です。

サービスチャージ (Service Charge)

日本でいう共益費、管理費に相当する費用です。オフィスの清掃、警備、共用部の維持管理、エレベーターや空調設備のメンテナンス、共有スペースの光熱費などに利用されます。こちらも賃料と同じように、1平方メートルあたりの月額料金で表示され、賃料とは別項目として請求されます。

2025年現在の相場感は平米あたり Rp50,000 〜 Rp150,000 程度です。

付加価値税 (VAT / PPN)

日本でいう消費税に相当します。インドネシアではVAT (Value Added Tax) または PPN (Pajak Pertambahan Nilai) と呼ばれ、賃料とサービスチャージに消費税をかけた額が実際の支払額となります。

2025年1月に12%に増税する予定でしたが、最終的には自動車や高級マンションなどの高級品に限定されました。2025年7月現在、ほとんどのオフィスビルでは11%と設定されていますが、ごくまれに12%となるビルもありますので事前に確認しましょう。

デポジット (Security Deposit)

日本の敷金や保証金に相当し、物件の破損や契約不履行などに備えるためのお金です。通常、月額賃料の2ヶ月分から6ヶ月分を入居時に支払います。

契約終了時に、未払い賃料や原状回復費用がなければ返還されます。返還までの期間や条件も契約書で確認しておきましょう。なお、デポジットには前述の付加価値税はかかりません。

内装工事費用 (Fit-out Cost)

一般的なオフィスビルでは、入居前のオフィススペースは「スケルトン」と呼ばれる内装が施されていない状態がほとんどです。そのため、テナント企業が自社のニーズに合わせて内装工事(壁の設置、床材、照明、配線、什器の設置など)を行う必要があります。当然ながら、この費用はすべてテナント側の負担となります。

内装工事の費用は、その内容やクオリティによって大きく変動するため、一概に述べるのは難しいです。一つの目安としては1平米あたり Rp2,000,000 から Rp10,000,000 程度とされています。

オフィスビルによっては提携している内装業者を紹介してくれることもありますが、ご自身で業者を探して依頼することも可能です。

工事の範囲や仕様については、事前にビル管理会社からの承認が必要となるケースがあります。また、退去時には「原状回復義務」が発生し、入居時の状態に戻すための費用もテナント負担となるため、初期費用だけでなく、退去時の費用もあらかじめ見積もっておくようにしましょう。

印紙税 (Duty Stamp / Materai)

インドネシアでは、一部の契約書に所定の印紙税(Materai)を貼付する必要があります。印紙税の金額は契約の種類や金額によって定められていますが、日本円にして数百円程度と、それほど大きな費用ではありません。

仲介手数料

不動産仲介業者を利用する場合、仲介手数料がかかります。

日系不動産会社の場合、日本の習慣にならって家賃の1ヶ月分かかることが多いようです。弊社でも成約時に1ヶ月分の家賃を手数料として頂戴しております。

礼金・更新料について

インドネシアの賃貸オフィス契約では、日本でいう礼金や更新料に相当する費用はありません。

初期費用シミュレーション

実際に弊社で提案したことのあるオフィスを参考にして、初期費用のシミュレーションをしてみます。なお、数字はあくまで仮のものとなりますのでご了承ください。

前提条件

  • スディルマン沿いのグレードAのオフィスビル
  • 従業員数:30名
  • 占有面積:280m2
  • 基本賃料:Rp350,000
  • サービスチャージ:Rp100,000
  • 付加価値税:11%
  • デポジット:3ヶ月分
  • 支払サイクル:1年払い
  • 内装工事単価:平米あたりRp5,000,000
  • 仲介手数料:家賃の1ヶ月分

家賃計算

  • 月額家賃:(Rp350,000 + Rp100,000) x 280m2 = Rp126,000,000
  • 付加価値税:Rp126,000,000 x 11% = Rp13,860,000
  • 税込月額家賃:Rp126,000,000 + Rp13,860,000 = Rp139,860,000
  • 初年度払込家賃:Rp139,860,000 x 12ヶ月 = Rp1,678,320,000

その他費用

  • デポジット:Rp126,000,000 x 3ヶ月 = Rp378,000,000
  • 内装工事費:Rp5,000,000 x 280m2 = Rp1,400,000,000
  • 仲介手数料:Rp126,000,000 x 1ヶ月 = Rp126,000,000

初期費用合計

  • 家賃:Rp1,678,320,000
  • デポジット:Rp378,000,000
  • 内装工事費:Rp1,400,000,000
  • 仲介手数料:Rp126,000,000
  • 合計:Rp3,582,320,000

ということで、30名のオフィスで日本円にしておよそ3500万円ほどの初期費用がかかる計算となります。なお、繰り返しとなりますが数字はあくまで仮のものとなりますので参考程度にお考えください。

南ジャカルタのオフィスビル群

ジャカルタで賃貸オフィスを探す際の注意点

  • 契約期間と更新条件:一般的なオフィスビルの賃貸契約は、通常2年〜5年といった長期契約が主流です。早期解約時のペナルティや契約期間満了後の賃料改定率について契約前に明確にしておくと安心です。
  • 内装工事と原状回復の条件:内装工事を行う際のビル側の規定(使用できる素材、工事時間など)を事前に確認し、ビル側の承認が必要な場合はそのプロセスも把握しておきましょう。また、退去時のトラブルを回避するためにも、契約書で原状回復義務の範囲(どこまでが借主負担で、どこまを経年劣化とするのか)を明確にしておくことが重要です。
  • 法務の専門家との連携:賃貸オフィスの契約は、その期間の長さや金額の大きさから、法的リスクを伴う可能性があります。必ず専門家に相談し、適切なアドバイスを受けるようにしてください。自社の法務部門だけで不安が残る場合は、すでにインドネシアに進出している日系法律事務所にリーガルチェックを依頼するのもいいでしょう。
  • オフィスビルの営業時間:オフィスビルによっては基本の営業時間が決まっており、それ以外の時間帯はアクセスが制限されることがあります。また、営業時間外にオフィスを使用した際の電気料金が別途請求されたり、そもそも時間外には電気が使用できないということもあります。
  • 交通アクセス:ジャカルタではまだまだバイクや車での移動が主流ですが、トランスジャカルタ(バス)やMRT(地下鉄)などの公共交通機関の発達により、これらを利用して通勤する人も増えてきています。人員を積極的に増やす予定がある場合は、従業員の通勤負担も考慮に入れた立地選びが重要となります。
  • ナンバープレートによる交通規制:スディルマンなどのジャカルタの主要ビジネス通りでは、渋滞緩和を目的としてナンバープレートの奇数・偶数による交通規制(Ganjil Genap)が実施されています。車での通勤や、車を使っての外回りが多い会社は注意が必要です。
  • オフィス周辺の飲食店:日々の食事のストレスは意外に大きいものです。特にインドネシアに駐在して間もない方は、衛生面の観点からも日本食レストランの利用機会が多くなるかと思います。オフィスビル内、もしくは徒歩圏内に日本食レストランがあるとランチでも気軽に利用できて安心です。
ジャカルタのオフィス

まとめ

以上、ジャカルタの一般的な賃貸オフィスに関するメリット・デメリットから料金体系、物件選びの際の注意点をみてきました。特に、契約期間の長さや初期費用、内装工事と原状回復にかかる規定などは事前にきちんと確認しておくことが重要です。

インドネシアで事業を推進するにあたり自社のオフィスを構えることは、事業の安定的な成長と企業価値の向上に大きく貢献します。この記事で解説した主要な料金体系やオフィス選びの重要なポイントをしっかりと理解することで、効率的に理想のオフィス探しができるはずです。

オフィスマップではジャカルタでのオフィスを探しを日本語でサポートしています。ぜひお気軽にご連絡ください。

無料相談はこちらから

オフィスマップではオフィスサービスオフィス店舗物件倉庫工場など商業用物件のご紹介をしております。ジャカルタでオフィスをお探しの方はお気軽にご連絡ください!