ジャカルタで飲食店や小売店、ジムやサロンなどの店舗ビジネスを展開するなら、モールへの出店は非常に魅力的な選択肢となります。
ジャカルタでは休日はもちろん、平日でも多くの人がモールで過ごしており、人気モールでは曜日を問わず常に人の流れが絶えません。そのため、モールに出店することで高い集客力とブランド認知度の向上が見込めるほか、他の有力ブランドとの隣接による相乗効果も期待できます。
しかし、その一方で、モール特有の料金体系や注意点も存在します。この記事では、ジャカルタのモールテナント物件のメリット・デメリットから料金体系、物件探しの注意点など重要なポイントを徹底的に解説します。ジャカルタで店舗ビジネスを考えている方はぜひ参考にしてください。

ジャカルタのモールとは?
ジャカルタにおける「モール」は、単なるショッピング施設ではなく、“人々の生活に深く根ざした“ライフスタイルの中心地”として機能しています。買い物や食事はもちろん、映画鑑賞、美容サービス、ジム、子供向けの遊び場まで、あらゆる用途を1カ所で完結できる空間として、多くの市民が日常的に利用しています。休日はもちろん、平日も放課後の学生や仕事帰りの会社員でにぎわい、一日を通して安定した集客力を誇ります。
ジャカルタ市内には、大小さまざまなモールが100施設以上存在しており、中には1日の来館者数が10万人を超えるような大型モールもあります。たとえば、Grand Indonesia や Kota Kasablanka は、地元住民から富裕層、観光客まで幅広い層に人気のある代表的なモールです。
また、モールは以下のようにターゲットや価格帯によって分類されるのが一般的です:
- 高級モール:Plaza Indonesia、Pacific Place など。外資系ブランドや高級飲食店が中心。
- 中価格帯モール:Senayan Park、Blok M Plaza など。ファミリー層や中間所得層をメインターゲットとしたモール。
- ローカル系モール:ITC系列など。日用品やローカルフードを扱う地元密着型の施設。
モール物件を選ぶ際には、自社の業態やターゲット顧客に合ったモールを選定することが、事業成功への第一歩となります。

モール物件のメリット
- 高い集客力と安定した来客数:モールは日常的に多くの来客が見込める商業施設です。特にジャカルタではモールが娯楽・食事・買い物をまとめて楽しめる「ライフスタイルの拠点」となっています。また、モールでは定期的なプロモーションやイベントをおこなっており、季節や天候に左右されず安定した集客が期待できます。
- ブランド力の向上:有名なモールへの出店は、それ自体が一定の品質や信頼性を保証していると見なされ、顧客からの信頼を得やすくなります。特に、初めてインドネシアに進出する企業にとっては、モールが“看板”の役割を果たしてくれます。
- 設備・管理体制が整っている:電気水道などのインフラをはじめ、空調、照明、セキュリティ、清掃など、モールが提供している設備や共有サービスを利用できるため、個別に手配する手間やコストを削減できます。また、トイレや公共スペースの整備も行き届いており、顧客満足度の向上にもつながります。
モール物件のデメリット
モール物件には多くの魅力的なメリットがある一方で、出店を検討する際には考慮すべきデメリットも存在します。これらの点を理解しておくことで、想定外なトラブルを避け
- 高額な初期費用と維持コスト:後ほど詳しく説明しますが、モールの賃料はとにかく高いです。また、契約時には保証金・前家賃・内装工事費といった初期費用もまとまった金額が必要です。面積あたりのコストとしては路面店やルコよりも高くなります。
- 長期契約の義務:ジャカルタのモール契約は長期固定契約(3〜5年)が基本です。仮に事業が軌道に乗らなかった場合でも、途中解約には高額な違約金が発生するリスクがあります。また、経過年度ごとの家賃上昇率もあらかじめ契約で定められていることが多いです。
- モールのルール・制約が多い:営業時間や決済方法、内装・看板などのデザイン規制など、モールごとの独自ルールや方針に従う必要があります。自由度が高い路面店と比べて、オペレーションが制限される場面も少なくありません。
- 集客がモールに依存する:モール自体の集客力に依存しやすく、来客者数がモール全体の来館者数に大きく左右される点もリスクです。モール自体にもトレンドがあるため、入居したモールの集客力や魅力度が低下した場合、自店の売上にも直接的な影響が出てしまいます。
- 同業他社との競争:モール内には同業種の競合店舗が複数存在することが多く、常に激しい競争にさらされます。モール自体の集客力となる一方で、テナントとしては差別化戦略が不可欠となります。

モールテナント物件の料金体系
ジャカルタのモールテナント物件の料金体系は、オフィスビルやルコなど他のタイプの物件と大きく異なります。またモールごとに少しずつ違いもありますので、事前にしっかりと確認しておきましょう。
基本賃料 (Base Rent / Rental Fee)
基本となる賃料で、平米あたりの月額単価で設定されます。モールのグレード、立地、フロア、区画の視認性などによって大きく変動します。
弊社でこれまでにご提案してきたモール物件でも平米あたり Rp150,000 〜 Rp600,000 と幅広く、物件によって4倍の価格差がありました。
サービスチャージ (Service Charge)
モール全体の維持管理にかかる費用(清掃、警備、空調、共用部分の電気代、施設のメンテナンスなど)で、いわゆる共益費に相当するものです。基本賃料と同様に専有面積あたりの単価で計算されます。
実際の料金は平米あたり Rp50,000 〜 Rp200,000 と、こちらもモールによって4倍ほどの開きがあります。
プロモーションチャージ (Promotion Charge / Marketing Fee)
モール物件特有の料金で、集客を目的としたプロモーション活動(イベント、広告、装飾など)にかかる費用をテナントが負担するものです。こちらも平米あたりの単価で計算されることが多いです。
相場は平米あたり Rp10,000 〜 Rp15,000 ほどです。基本賃料やサービスチャージに比べれば負担は小さく見えますが、毎月の固定費と考えるとバカにできない金額です。
付加価値税 (VAT / PPN)
日本の消費税に相当します。税率は11%です。
インドネシアではVAT (Value Added Tax) または PPN (Pajak Pertambahan Nilai) と呼ばれ、上記の基本賃料、サービスチャージ、プロモーションチャージすべてに付加価値税がかかります。
保証金 (Security Deposit)
日本の敷金や保証金に相当し、物件の破損や契約不履行などに備えるためのお金です。通常、基本賃料+サービスチャージの数ヶ月分(一般的には3ヶ月分)を契約時に支払います。
保証金は契約終了時に、未払い賃料や原状回復費用がなければ返金されます。なお、返金には契約終了後数ヶ月〜半年ほどかかることがあるため、資金計画を立てる際には注意が必要です。
内装工事費用 (Fit-out Cost)
どのモールでも内装工事費はテナント側の負担となりますが、あらかじめ平米あたりの内装工事費用が定められているモールもあります。
また、モールによっては内装業者の指定があったり、内装の仕様や工事期間に厳しい規定があったりするので、事前に確認しておくとよいでしょう。
その他の料金
以下はモールによって必要になる料金です。物件を検討・提案する段階で、事前に確認しておくことが重要です。
内装工事期間中の仮囲い設置費用
内装工事期間中は来客者から工事の様子が見られないように仮囲いをします。モールによってはこの仮囲いの設置費用がテナント負担となることがあります。
通常、仮囲いには「●●● Coming Soon」といった広告も掲載され、来客者への事前告知の意味も果たします。
レベニューシェア(売上連動費用)
店舗での売上に応じて支払う料金です。通常、売上高の●●%という形で定められます。フードコードや催事場のような多店舗が1ヶ所に集まっている場合に多い料金形態です。
モールテナント物件の支払いサイクルについて
モールテナント物件は料金体系だけでなく支払いサイクルも他のタイプの物件と異なるケースが多いです。少し複雑になるのでしっかり確認しておきましょう。
まず、モールテナントの契約期間は3〜5年間が一般的です。そして、基本賃料とサービスチャージは支払うタイミングが異なります。
- 基本賃料:頭金として賃料総額から20%〜30%を契約時に支払う。残りの70%〜80%を契約期間 − 12ヶ月で支払う。
- サービスチャージ:毎月支払う
サービスチャージはシンプルに月々の支払いです。それに対して基本賃料は少し複雑なので、具体例を挙げながら説明します。
基本賃料の支払いサイクル
下記のような例とします。
- 契約期間:5年間(60ヶ月)
- 基本賃料:月額 Rp50,000,000
- 頭金:賃料総額の30%
まず、賃料総額が Rp50,000,000 x 12ヶ月 x 5年間 = Rp3,000,000,000 となります。
よって 頭金が Rp3,000,000,000 x 30% = Rp900,000,000 となり、これを契約時に支払います。
残金は(契約期間 − 12ヶ月)で支払うので、60ヶ月 − 12ヶ月 = 48ヶ月で払い込みます。
よって、1ヶ月目から48ヶ月目の毎月の支払い賃料は Rp2,100,000,000 ÷ 48ヶ月 = Rp43,750,000 となります。
なお、5年目(49ヶ月目〜60ヶ月目)は、基本賃料の支払いはなく、サービスチャージやプロモーションチャージのみの支払いとなります。
もちろんモールによって多少の違いはありますが、モールテナント物件ではこのような支払いサイクルが一般的となります。

ジャカルタのモールテナント物件探しの注意点
モール物件は集客力の高さが魅力ですが、競争も激しく、出店には慎重な判断が求められます。以下の3点をしっかり意識することが成功の鍵となります。
ターゲット層に合ったモールかを見極める
モール物件では、どのモールに出店するかによって成功の可否が決まると言っても過言ではないでしょう。
ジャカルタには高級モールからローカル密着型まで多様なモールが存在し、それぞれ来館者の属性が異なります。たとえば、Grand Indonesia や Plaza Indonesiaは富裕層や観光客が多く、Blok M Plazaは中間層や学生が多いといった特徴があります。
自社の商品やサービスが、そのモールの客層とフィットしているかを事前に分析し、ブランディングや他店の価格帯との相性も踏まえて判断することが重要です。
検討が長期になる前提で臨む
人気モールでは空き物件がほとんど出ず、出たとしてもすぐに埋まってしまします。そのため、理想のモール物件を見つけるには、検討が長期にわたることを覚悟し、いい物件が出たらすぐに動けるよう準備しておくことが肝心です。
また、弊社を含め現地の不動産会社やモールの担当者と定期的に連絡を取り、希望条件やブランド情報を共有しておくことで、空きが出た際に優先的に情報をもらえる可能性が高まります。
高い賃料に見合う収益があるか冷静に判断する
人気のモールは確かに高い集客力を持つものの、それに比例して賃料やその他の維持コストも非常に高額になります。粘り強く待ってようやく競争の激しい人気モールの物件に入居できたのに、実際に入居すると固定費の負担が大きく、契約満了を待たずに早期撤退というケースも見られます。
想定売上や利益率と照らし合わせて、モールへの出店が貴社の事業にとって本当に利益を生み出すものなのか、資金繰りに無理がないかを冷静に見極めましょう。
また、モール出店にかかる総コストを、同等規模の路面店や別の立地での出店コストと比較検討するのも有効です。モールが提供する「集客力」「ブランド力」「インフラ」といった付加価値が、高額な賃料に見合うものなのかを客観的に評価することが重要です。

まとめ
ジャカルタでのモール出店は、集客力・ブランド認知ともに大きな魅力がありますが、その反面、物件の競争やコストの高さといったハードルも存在します。
出店成功のためには、
- 自社の商材と相性の良いモールの見極め
- 長期的な物件確保を見据えた計画性
- 家賃や初期費用を踏まえた現実的な事業シミュレーション
が欠かせません。
特に人気モールへの出店を目指す場合は、希望の空き区画が出るまで粘り強く情報収集と関係構築を続けることが重要です。
弊社でもモール物件のご紹介をしております。ジャカルタで店舗ビジネスを検討されている方はぜひお気軽にお問い合わせください。